台湾ドラマ「俗女養成記1(女の幸せマニュアル1)」やっと見た!笑って泣ける切ないコメディ!!(ネタバレなし感想)

2019年に大ヒットした台湾ドラマ「俗女養成記1(女の幸せマニュアル1)」。

2021年の今、続編が放送されてるので気になってたところ、中華電視(華視)テレビの公式Youtubeで公開してるのを見つけたので、今頃だけど見てみたところ、ドハマりした。

いや、最初は今週の初めにYoutube見ててたまたま見つけたので、会社の昼休みにちょっと触りだけ見ただけだったんだけど、すっごく面白くて、昨日の晩と今日の午前中で全10話を一気見した次第。

「俗女養成記1(女の幸せマニュアル1)」の日本語版の公式サイトの作品紹介を引用すると(以下『 』内引用)、


『陳嘉玲(チェン・ジアリン)は、台北で社長秘書として暮らす39歳の独身女性。付き合って4年の彼氏・江顯榮(ジャン・シェンロン)と同棲していたが、パッとしない毎日を送っていた。

ある日、元カレの結婚式に招待された嘉玲は花嫁のブーケをゲット。その勢いで顯榮に逆プロポーズをした嘉玲は、なんと結婚の準備を進めることに。ところが姑の問題や新たな恋を予感させる人物が現れて…。』


っていう感じで、これだけ見ると普段の私のドラマの好みとは方向が違う感じなんだけど、実際見たら、すっごい基本コメディなのに、しみじみと心に刺さる切なくてシリアスな部分もあって、引き込まれた。

ドラマには、現在の陳嘉玲が回想する形で現在パートと彼女が子供だった1980年代の出来事が交互に進行する。

ヒロインは台南北部の後壁という小さな町出身。ここって、2018年にバイク旅でたちよったところで、ドラマの中に見たことある場所がいくつも出てきて楽しかった。

閑話休題。

台南の田舎に住むヒロインは幼いころから都会の台北に憧れて、台北の大学に進学して、割と大きな会社に入り、結婚はまだだけどイケメンの彼氏と4年も同棲していてイケてる都会の大人女子なんだけど、40歳で結婚もまだで子供もいないことに後ろめたさも感じている。結婚することにはなったけど、嫁姑問題から彼氏との関係にも疑問を感じて、会社での理不尽な待遇にも嫌気がさして爆発して、全部うっちゃってしまうヒロイン。

「なんでこうなったの、私の何がいけなかったの、どこで失敗したの……」

時折ふいに思い出す、子供のころの出来事……。


このドラマが特にすごいなと思ったのは過去パートの部分。ドラマの1980年代はちょうど台湾に大陸から蒋介石率いる国民党政府がやってきて、台湾の知識階級への弾圧「白色テロ」や台湾語の禁止と国語(中国語)など国民党政府が定める「正しい」教育の徹底が行われていた国民党政府独裁時代の後半に当たる。

ドラマの中でも、コメディタッチのドラマの中にオブラートにくるむように、不穏な時代の空気がさり気なく描かれている。

小学校の教室で台湾語を話すと罰則を科せられたり、ヒロインが友達になった外省人のお金持ちのお嬢さんの家庭に憧れて「国語(中国語)」の方が上品、台湾語は話してはダメ」と言い出したり、中華民国第3代総統の蔣経国が亡くなった時にはヒロインがひとりも服を身に着け、テレビでお笑いを見て爆笑する家族に「総統が亡くなったのに笑うとは何事か。愛国心はどうした」みたいなことを言い出したりと、この時代に行われていた教育って、現代人から見たら問題ありありで恐ろしさを感じる。しかもこういう部分は、日本統治時代の皇民化政策のやり方とも通じるものがあって愕然とさせられたり。

また、戦後の国民政府が台湾に渡ってきた後の混乱と台湾にもともと住んでいた「本省人」への弾圧がきびしく、とくに1947年に勃発した二二八事件のあと戒厳令が敷かれ、知識層を主とした「政府により反対勢力とされた」人々への「白色テロ」といわれる弾圧が戒厳令が解除される1987年まで続いた影響も、はっきりとした形ではなく、それとなく描かれている。

たとえば、ドラマの中で蔣経国が亡くなった年が1988年の戒厳令解除の翌年であったり、ヒロインが路上でもらった民主主義を啓蒙するチラシを自宅に持ち帰ったところ、それを見たお爺さんが血相を変えて「誰に渡された、受け取ったところを誰かに見られなかったか!?」と恐ろしい剣幕でチラシを破いて捨てたり、その後別の日に普通の用事で自宅にやって来たお巡りさんを見てお爺さんが蒼白になってまともに動けなくなったり、ヒロインが誤解から家出した際にはお爺さんは勇気を振り絞って背広に帽子を身に着けた正装で警察署に捜索願を出しに行くも恐怖からなかなか中に入れない……といった場面と、ヒロインの回想のナレーションでちらりと「昔警察と何かあったらしい」的なことが語られているのを合わせて、お爺さんは戦後まもなく白色テロ関連で恐ろしい目にあったことがわかるようになっている。

しかし、ヒロインの家出騒動が解決した後、捜索に協力してくれた近所の人と共にお巡りさんも交えてみんなで遅い晩御飯をいただく場面では、お爺さんがお巡りさんと杯を交わして、お巡りさんの帽子をかぶったりと、わだかまりがなくなってる様子が見られることで、時代が民主社会に向けて変わっていってることが伝わってくる。

こういった台湾の社会の変化と歴史の流れが、一見あまり関係なさそうな台南の田舎の女の子の日常生活にも、やはり影響を与えているのだということが描かれてるのがすごい。それも、すごい笑えるコメディーシーンの中にそっと描かれてるっていのがまたすごい。


家族の関係の描写も素晴らしい。

お爺さんやお婆さん、お父さん、お母さんたちが、家族だからこそ、遠慮がなくなり罵詈雑言がとびだす大喧嘩がはじまったり、きつい態度で相手を傷つけたり、かとおもうと不器用で口になかなか出せないけど相手のことを大事に思って一生懸命支えようとしていたり。

明るくて可愛いヒロインも、小学校時代、いとこへの嫉妬から嘘をついて相手を陥れて、でも相手の優しさにふれてやっぱり仲直りしたり。考え方や進路について対立することも多く喧嘩が絶えなかった両親に対しても、大人になってから、改めて親の愛情を目の当たりにして涙したり。

ドラマ全編を通して、視聴者はヒロイン家族の色々な姿を通して、自分の家族を見て、笑って、時に涙するのだと思う。私も、ドラマの後半は何度も号泣してしまった。いまはコロナでなかなか帰省もできないけど、家族が田舎にいてくれるだけで幸せなんだなあ……と。


コメディシーンはもう本当に秀逸で、役者のみなさんんが適材適所で全員はまり役!

セリフはほぼ全編台湾語だから聞いてると全然わからないけど、台湾語のリズムや発音がかわいらしくて、日本語で言うと全編関西弁のドラマみたいで、すっごく楽しい。これはぜひ、吹替じゃなくて字幕で見たいドラマだ。幸い台湾ではドラマに中国語の字幕がつくのはデフォルトなので、セリフを追いかけることができてよかった。


あと、ヒロインの恋愛模様の着地点も、なかなかよかった。まだ続編の「2」を見てないけど、ヒロインが悩んだり、失敗したり、回り道して選んだ最終回の結末は、「よかった!」と手をたたきたくなった。

ヒロインは40歳。人生100年時代とすると、あと60年もあるのだ。でも同時に、生きていると時間はあっという間に過ぎて、人の人生は短いものでもある。

今の自分を精一杯愛して、日々に感謝できたら、きっと人生はもっと軽やかに楽しいものになるのだろうな。

ヒロインに、私たち視聴者に、幸あれ! と、心が暖かくなるラストだった。


続編の最終回の放送は明日だそうで。

この連休、これから続けて続編の視聴に進みたいと思う。

……と思ったら、「2」はまだYoutube公開始まってなかった! 残念! しばし待とう。

ともかく、日本でも又放送してたら、ぜひ見てみてほしい。本当に面白いのでおすすめです!


↓ 中国語がわかる方には、「華視テレビ公式Youtubeチャンネル」での視聴がおすすめ!

台湾いとしこいし

台湾が好き。 やって来た来た、いとしくて、こいしい、台湾。 勉強して、食べて、遊んで、旅して。勢いだけで、突っ走る元OL留学生、今日も台湾をゆく。 2017年台湾の大学の修士課程卒業、台湾で社会復帰。 instagram@taiwanitoshikoishi