今のアパートに引っ越してきてから、朝晩に近所の市場を通り抜けるのが定番の通勤コースになっている。
市場の入り口で毎日、通路に椅子を出して座っているお婆ちゃんがいる。その場所はお婆ちゃんのお店なのか、何かの予備のスペースなのか、いまだに良く分からないのだけど、市場の中に向かってお婆ちゃんは座っている。
だから、朝、市場に向かって歩いていくときには、基本的にはお婆ちゃんと顔を合わせることはなく、帰りに市場を通って出てくるときにお婆ちゃんの顔が見える、そんな感じ。
半年以上、特になんということもなく毎日お婆ちゃんの前を通過していたのだが、ここ最近、どうも帰りにお婆ちゃんと目が合うような気がするようになった。3月に入ってからは、なんとなく目で会釈されているような気までするようになった。
私はお婆ちゃんが誰だか、どこの方かも知らないし、あちらも私がどこの誰だかご存じないと思う。もしかして、誰かと見間違えているのかしらん? と思いながらも、なんとなく、目があったら目で会釈した方がいいのかな、と思ったり。
先週は、やっぱり目で微笑みかけられている気がしたので、こちらも笑顔でうなずいて、会釈してみた。おばあちゃんの笑顔が、大きくなった気がした。
そして昨日。
またお婆ちゃんと目が合ったので、大きく会釈して微笑みかけたら、「回来了~(おかえり、帰ったの~)」と声までかけられた。
お婆ちゃんには、やっぱり誰かと間違われているだけかもしれないけど。それでも、この町の人間になったような、何か、胸がぽっと温かくなった気がした。
そんな、4月の始まり。
0コメント